子どもたちの安全な携帯利用について考えようと、「もっとグッドネットinえひめ ネット...保護者の知らない世界」(松山市小中学校PTA連合会主催)が2月27日、松山市上野町の県生涯学習センターで開かれた。

同市教育委員会学校教育課の田中祐二さんが、2009年秋に市内の小学5年生~中学3年生とその保護者を対象に実施した「携帯電話に関する調査」結果を報告。「子どもと保護者で意識のずれがある」と問題提起し、携帯電話の危険性を知る▽親子で話し合う▽親が子どもの使い方を見守る─をポイントとして挙げた。続いて、基調講演とシンポジウムがあり、保護者や教員ら約300人が、子どもを取り巻く携帯電話の現状について認識を深めた。

◆基調講演◆

「ネット...保護者の知らない世界」

ぐんま子どもセーフティネット活動委員会委員長 飯塚秀伯氏

写真:飯塚氏登壇の様子

2009年4月に法律が施行され、子どもの携帯電話(以下携帯)は原則としてフィルタリングを設定することが義務付けられた。フィルタリングは有害サイトへの接続を制限するもので、大きく分けて2種類ある。ホワイトリスト方式はフィルタリングが強く、特定のサイト(携帯会社の公式サイト)にしかいけない。ブラックリスト方式はフィルタリングが弱く、特定のカテゴリーのサイトを遮断する。

最近、無料ゲームサイトで遊びたいという小学生に親が携帯を貸して、高額の請求書が届く金銭トラブルが、消費生活センターに多数寄せられている。無料と宣伝しているが、実際には有料部分が多い。アバターと呼ばれる自分の分身の衣装を買ったり、ゲームのアイテムを買ったりする。子どもたちはサイト内のお金と現実のお金の区別がつかず、無料だと思いどんどん使ってしまう。

携帯に初めてインターネット機能が付いたのは1999年。2005年ごろに定額制のパケット使い放題プランが登場し、子供たちの使い方が大きく変わり、暇さえあれば携帯で遊ぶようになった。インターネットは、学校の勉強に役に立つホワイトゾーン、遊びの部分であるグレーゾーン、有害情報のブラックゾーンに分かれる。ブラックゾーンには出会い系サイト、家出サイト、不当請求サイトなどがあり、フィルタリングを設定すればだいたいブロックできる。

出会い系サイト絡みの犯罪検挙数は、03年の規制法施行でいったん減るが、また増加したため、07年12月に規制強化された。これによって同検挙数は減ったものの、一般サイト絡みの検挙数が急増し、合計数は増えた。グレーゾーンの中には、プロフと呼ばれる自己紹介のサイトがある。自分の個人情報を公開してしまうだけでなく、友達紹介で個人情報を書き込むケースもある。「友達は大切だからこそ、その個人情報を守る必要がある」と親子で話し合ってほしい。

本来ならブラックリスト方式ではじかれるサイトでも、EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)の認定サイトは見ることができる。現在、ゲームサイトをはじめ約40ある。

ゲームサイトに登録すると、自分のコーナーを持つことができ、日記やサイト内メールなどの機能が使える。ゲームにもチャット機能がついていて、リアルタイムで会話が可能。大人と子どもが混在し、一緒に遊んでいる。保護者が知らない機能に満ちたコミュニティーサイトとなっている。

最後に携帯について、子どもに持たせない▽通話機能のみの携帯を持たせる▽インターネット機能付きを持たせる─など、必要に応じて段階的に考えることを提言したい。

◆シンポジウム◆

「ネットと上手に付き合うために」

写真:パネルディスカッションの様子

<パネリスト>
田中俊成氏/松山市立浮穴小学校PTA
永井章氏/松山市立椿中学校PTA
明比卓志氏/県立西条農業高校PTA
桑崎剛氏/熊本県南小国中学校教頭・安心ネットづくり促進協議会特別会員

<コーディネーター>
飯塚秀伯氏/ぐんま子どもセーフネット活動委員会委員長


写真:各パネリスト登壇の様子

(写真上から)
永井章氏/松山市立椿中学校PTA
田中俊成氏/松山市立浮穴小学校PTA

永井氏:海外の状況はどうなっているのか。

桑崎:海外ではネット利用の中心はパソコンで、携帯は通話機能中心なのでトラブルは少ない。なぜ、日本では多機能携帯が普及したのか。一つには、ネット環境整備の遅れを補う手段として、携帯にネット機能を付けたと考えられる。

田中:今のところ小学生に携帯の必要性は感じていないが、塾に行き始めたり、地区をまたいで学校に通ったりする場合は必要性があると思う。ただし、携帯を持つことがネット利用につながるのならば、管理しきれない部分があるだろう。

飯塚:最初は、通話機能だけでいいのではないか。慣れてから、インターネット機能も使えばいい。

桑崎:子どもが最初に持つ携帯は、通話機能とGPSがあれば十分だという意見がある。過去にそういう携帯が発売されたが、売れなかったので各社が引っ込めた。

飯塚:なぜ売れなかったのか。私見では、保護者がインターネット機能の怖さを何も知らされていなかったからだ。知らせる努力も足りなかった。

桑崎:男子小学生が母親から携帯を借り、ゲームサイトを検索したところ、偽サイトにつながり40万円もの請求が来た。子どもの見抜く力を育成するという視点も大事だ。

飯塚:今の偽サイトにはよくできたものがあり、小学生では判断が難しい。接続をブロックする必要がある。パケット使い放題にしたから、いろいろなサイトに入ってしまうという状況もある。使った分だけお金が掛かるようにした方が、どのようなサイトを使ったか分かりやすい。

永井:私の娘もパケット使い放題にしたいと言ってくるが、インターネットを使うなら居間のパソコンを使うよう言っている。

桑崎:パソコンや携帯でネット使用後の履歴チェックについて日米比較データを見ると、日本は米国と比べ、親が子どもの履歴を確認していない。また、大人自身の情報モラルにも問題があり、携帯の使い方を見直す必要がある。

写真:各パネリスト登壇の様子

(写真上から)
明比卓志氏/県立西条農業高校PTA
桑崎剛氏/熊本県河内中学校教頭・安心ネットづくり促進協議会特別会員

明比:高校PTA連合会は保護者の携帯利用について全国調査をしている。調査結果では、約4分の1の親が、子どもが何か話し掛けているときにメールを打っている。そうすることで、子どもの親への信頼度が低くなり、学習にも影響する。

桑崎:携帯について家庭でしっかり見守ることが大切だ。携帯を持たせる前に目的やルールなどを親子で話し合い、堅苦しいが契約書をつくるといい。家庭でのルールの一つとして、自宅では居間で使うことが大事だと言われている。昔、固定電話は居間にあり、どんな電話がかかっているか、親が背中越しに見守っていた。携帯になって、見守り機能が働きにくくなっている。子どもが急に携帯と距離を置くなど、変化のサインにも気をつける必要がある。

飯塚:携帯については必要か不要かの二者択一ではなく、頭を柔軟にして、段階的にとらえてほしい。

愛媛新聞社提供2010年3月23日(火)<朝刊>掲載