我が国は、ユビキタスネット社会の実現に向け、ICT(情報通信技術)基盤の整備を進め、利活用を図ってきた。その結果、インターネットは、国民の社会活動、文化活動、経済活動等あらゆる活動の基盤(社会的インフラ)として利用されるようになり、国民生活に必要不可欠な存在となった。今後、本格的な少子高齢化社会を迎える中で、国際競争力の維持・強化を図っていくためにも、インターネットの有効な活用はますます重要な鍵となるものである。
一方で、急速なインターネットの普及は負の側面も拡大させた。昨今のインターネット上における違法・有害情報については、青少年保護の問題にとどまらず、自殺誘因サイトや、犯罪を助長するサイトの存在など、多くの問題点が指摘されており、我々はインターネットの発展における大きな岐路に立たされている。
こうした状況を踏まえ、先の第169回国会において「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が成立した。同法は、表現の自由等に配慮し、過度な規制は導入せず、違法・有害情報に対する民間の自主的取組を一層促進し、ICTに関する国民のリテラシーの強化を推進することなどを基本とした内容となっている。
インターネットの利用環境整備は、これまでも民間の自主的取組として努力がなされてきたところである。しかし、これらは直面する問題への対症療法的取組であったり、各施策間の有機的な連携が十分に行われていなかったり、ボランタリーに参加する主体も一部のネット関連企業であったりと、個別の取組にとどまっていると言わざるを得ないものである。また、地域的にも偏りがあり、ネットリテラシー強化の取組についても格差が生じることが懸念される。
そのため、今後は、これまで企業や教育機関、NPO等によって個々に行われてきた取組を有機的に連携させることや、単体では社会貢献活動を行うことが困難な中小の企業、意欲ある個人、地域のボランティアグループ、また、インターネットを利用する様々な企業からも、さらに多くのプレーヤーが参画できるようにした上で、総合的かつ戦略的な取組とするとともに、日本全国あまねく実施できるように配慮することで、民間における自主的取組を質・量ともに向上させることが不可欠である。
このための仕組みとして、利用者、産業界、教育関係者などが、お互いの取組についての情報を共有し、優れた取組を取り入れるとともに、これまでの枠を超えた協働による取組を生み出す交流の場が必要である。具体的には、どこの地域においても安心なインターネット利用環境を整備し、利用者がインターネットの光と影を正しく知り、楽しく賢く安心して使うツールとして発展させることを目標に、地域の活力を取り戻すことや国際連携・国際貢献も視野に入れた安心ネットづくり促進協議会を設立する。
安心ネットづくり促進協議会は、インターネットの利用環境を整備するために欠かせない三つの活動に取り組む。第一に、総合的なリテラシー向上の推進であり、インターネットの影の部分への対応だけではなく、すばらしさも伝えられる啓発活動を実施し、ICTを使いこなす子どもたちとそれを暖かく見守る大人たちを育成する。第二に、民間の自主的取組の推進であり、民間企業等が依拠できる自主憲章等の策定とその普及等を図ることにより、安心・安全なネット環境を可視化できるようにする。第三に、インターネットの利用環境整備に関する知見の集約であり、民間企業や各地方での取組を収集・紹介すること等により、様々な活動に取り組む主体間のアイディアの共有と、さらなる工夫を図るための議論の場を提供する。
安心ネットづくり促進協議会は、これらの諸活動を通じ、民間主導による良好なインターネット利用環境の構築に貢献する決意である。