2014年11月30日、長野県エコールみよたにおいて「文部科学省ネットモラルキャラバン隊・長野県PTA研修会」が開催され、安心ネットづくり促進協議会が共催し、約200人の方が参加されました。
文科省事業ネットモラルキャラバン隊・長野県PTA研修会
基調講演
「スマホ時代を生きていく子供たちのために」
講師:藤川 大祐氏 (千葉大学 教授)
藤川先生の基調講演では、様々なネット利用における課題は、大人だけではなく子供たちにしっかり伝わらなければならないこと。
他方で、子供にとってわかりやすいことが大人にはわかりにくい面もあり、単純に「ネットいじめはしない」では解決しないし、正解がある課題ではないこと。いじめにつながりそうな状況を「知恵」を出し合って考える教育が大切で、家庭がしっかりして生活習慣を整えることが基本となること。
ネット上のいじめは、いじめ全体の中での比率は上がりつつあるので注視していること等のお話をいただきました。
パネルディスカッション
「会話から対話へ ~子供と話そうネットのこれから~」
コーディネーター:
小寺 信良氏 ((一社)インターネットユーザー協会 代表理事)
パネリスト:
藤川 大祐氏 (千葉大学教育学部教授/安心協 普及啓発広報副委員長)
関口 直樹氏 (文部科学省 参事官(青少年健全育成担当)付推進係長)
丸田 浩之氏 (長野県PTA連合会 副会長)
飯塚 一仁氏 (KDDI(株)中部総支社 管理部長)
長野県PTAの丸田氏からは、県PTAでは本テーマの研修によく取り組んでいること、県の特徴として所持率が全国平均より低いが、関心は高いこと等が紹介されました。
子供のネット利用、とくに利用時間については大人の理解とかなりずれがあること、フィルタリングは、子供を信用しているので不要という回答が多いが、子供の利用を親が良く理解し、子供としっかりコミュニケ―ションをとることが重要とお話しいただきました。
KDDIの飯塚氏からは、前年度に全社で約3千回の講習を実施したが、ここ数年の講習申込みが、右肩上がりに増加していることや、ネットやケータイ、スマホ利用に関して、かつての「マナー・ルール」のテーマが、学校内での「人間関係やコミュニケーション」のテーマに変わってきていることが紹介されました。
文部科学省の関口氏からは、パソコンやスマートフォン等の情報機器が児童生徒含む広く個人に普及するなど社会の情報化が急速に進展しており、教育においても、ICTの活用は、分かりやすい授業や子供たちの主体的な学びを実現する上で効果的であり、確かな学力の育成に資するものであるが、利便性を享受する一方で課題や現状を正しく認識し児童生徒が適切に情報を取り扱う能力や態度の育成が急務。これらを踏まえた上で、文部科学省では、教員の研修や教員の指導用教材の作成などを通じた情報モラル教育の充実のほか、フィルタリング等の普及啓発、家庭のルールづくりの重要性の周知等を図っていきたいとのお話しがありました。
藤川先生からは、一般的にネットの投稿は友だちしか見ないものだが、問題ある投稿は必ず見ている誰かがいることや、情報が伝わるギャップを理解すること、文字情報は拡散されるという意識や失敗事例を学んでほしいとのお話しがありました。
また、子供の生活習慣として、スマホの短時間利用は問題ないが、長時間利用は様々な生活面でも問題を生じることや、フィルタリングについて、18才ですぐに外すのは危ないため、高校生の時からカスタマイズ等少し慣れてもらう必要があるとお話をいただきました。
会場の参加者からは、いじめはネットのない時代からあるが、今の時代は同調圧力が強いと感じていて、それはスマホが増幅しているのではないかと感じていること。保護者自身が、コミュニケーションサイトで子供の名前や写真を載せるリスクについて気になるといった意見がありました。
コーディネーターの小寺氏は、子供たちが、高いモラルを要求される社会で羽目を外さずに生きていけるかという課題提起があり、保護者の視点でとらえたときに、そもそも子供のネット利用に疎いこと(大人のスマホ率5割に対し、高校生は8割)、わからない保護者は慎重になるが、子供と一緒に使うか学ぶ意識が大切であること。依存、生活習慣、長時間利用は、保護者が気付いていない場合もあること等の指摘がありました。
ネット依存はギャンブル依存のように快楽的なものではなく、コミュニケーションインフラなのでやめられず苦しんでいる子供もいること。フィルタリング利用率が下がっているのは、説明出来ないショップ店員がいるくらいスマホの設定が難しくなっているが、本来は子供の成長に併せて設定していくべきとのお話がありました。
「コミュニケーションの問題」は我が子だけではなく、周りの子もわからないとだめなので、地域全体で啓発の取組みを行い、ガイドラインを大人と子どもで一緒に決める等の対策が必要との話で締めくくられました。