2014年10月8日(水)、佐賀県佐賀市「アバンセホール(佐賀県立男女共同参画センター)」にて、「第9回青少年のインターネット利用環境づくりフォーラムin佐賀」が開催され、約200名の方にご参加いただきました。フォーラムでは、午前中に企業講演、午後は有識者による基調講演と関係者によるパネルディスカッションを行いました。

青少年インターネット利用環境づくりフォーラムin佐賀

講演 1

次代を担う子どもたちの『生きていく力=学び力』を育むために

講師:井上 真由美氏(株式会社ミクシィ/安心協 普及啓発作業部会 副主査)

実社会とネット社会の共通点は「コミュニケーション」であり、ネットの進化がコミュニケーションスタイルに変化をもたらせたこと。子供の社会スキルを育てるために、ときにはネットから離れてみることや、社会や他者との社会的な学びを通じて、危険を回避する力をつけることが大切であることをお話しいただきました。

写真:講師 井上真由美氏講演の様子

講演 2

安心・安全なインターネット社会に向けて ~グリーの取り組み

講師:相川 真太郎氏(グリー株式会社 執行役員)

グリーでは車社会における交通安全の取り組みの歴史に学び、ネット社会においてもその発展や利用者の増加に伴って被害を増やすことは出来ないという理念のもと、サービスの安全性の確保と啓発活動を推進してきました。さらにスマホが普及する環境下においては、利用者、企業、行政が3者一体となって安心安全なネット社会を築きたいとのお話がありました。

写真:講師 相川真太郎氏講演の様子

講演 3

いまどきの子どもたちとモバイルインターネット

講師:遊橋 裕泰氏(株式会社 NTTドコモ モバイル社会研究所 主任研究員)

スマホになって利用時間が長くなっていること、この7年間で小学生のモバイル普及率が上昇していること等、様々なデータ分析から中学生になり始めの時期が要注意との解説をいただきました。フィルタリングは重要ですが、本来は情報リテラシーを身につけることや何かあったら家庭で相談できる環境づくりがもっと大切で、これまでは子どもケータイの整備や法規制等で子どもを守ることに注力してきましたが、スマホの時代となり、たくましく育てるタイミングに移行してきたとのお話しをいただきました。

写真:講師 遊橋裕泰氏講演の様子

基調講演

教育分野におけるICTの利活用について

講師:中村 伊知哉氏(慶應義塾大学 教授/安心協 普及啓発広報委員長)

子どもとネットの関係は、スマホ、アプリ、短い時間で急激に様変わりしており、また、フィルタリングの加入も減少傾向にあります。規制や技術は、短中期的な対策ですが、長期的には教育が重要で、保護者も家庭での教育の重要性を認識してきています。かつてネットは「百害あって一利なし」と表現され、子どもから遠ざけようとされる方もいましたが、今は、ネット機器をどう賢く使える様に育てるかに変化してきました。世界では情報活用能力の向上が求められ、日本では政府が教育の情報化を掲げて2020年には1人1台の情報端末を学校で持つことを目指しています。教育の情報化は「教え合い学び合い」の精神で教育界や関係者がICTを活用して、いかに子どもの理解度を高める方向に切り拓いていくかが重要であるとのお話しいただきました。

写真:講師 中村伊知哉氏講演の様子

パネルディスカッション

青少年のインターネット利用環境整備に関する地域連携の取組について

コーディネーター:
桑崎 剛氏(熊本市立総合ビジネス専門学校 教頭/安心協 特別会員)

パネリスト:
中村 伊知哉氏(慶應義塾大学 教授)
陣内 誠氏(ITサポートさが 理事長)
角 和博氏(佐賀大学 教授)
古川 卓氏(佐賀大学)
古賀 萌子氏(佐賀大学)


はじめに各パネリストのそれぞれの取組みについて紹介があり、陣内氏はNPO活動を通じて子どもたちにネットの話を芝居(佐賀にわか)や紙芝居形式で楽しく伝えていること、角氏は教員研修メニューに「情報教育」を盛り込んだこと、古川氏は学生組織を活用した「情報モラル学習チューター」を養成して学校に派遣して支援をしていること、古賀氏は地元FM局の協力を得て情報モラル講話をラジオ番組で発信していること等の紹介がありました。

情報モラルは、親子で話すことや親が子どもから学ぶこと等が肝要で、「親子の時間を持つこと」がさらに大切との意見交換もありました。会場からは「教育の情報化よりもこれまでの紙の教材のほうが記憶に残るのでは」との意見も出ましたが、パネリストからは、教育の情報化は「紙をデジタルに置き換える」と言うとらえ方ではなく、デジタルの良さを採り入れて、かつ、紙の良さもを採り入れる必要があること。デジタルは「先生が要らなくなる」や「字を読まなくなる」という誤解もあるが、これまでの教育と対立するものではないこと。未知の部分をクリアにして良い部分を生かしていくこと。それらの転換にあたっては教員だけが考えるものではなく、保護者や企業、行政、子どもなど、みんなで考えて、よりよい教育を目指していく必要があるとの議論で締めくくられました。

写真:コーディネーター 桑崎剛氏登壇の様子

写真:パネリスト 陣内誠氏登壇の様子

写真:パネリスト 角和博氏登壇の様子写真:パネリスト 古川卓氏登壇の様子写真:パネリスト 古賀萌子氏登壇の様子写真:パネリスト 5名登壇の様子