2014年11月14日、神奈川県横浜市「横浜情報文化センター情文ホール」にて「第11回 青少年のインターネット利用環境づくりフォーラムin神奈川」が開催され、約200名の方にご参加いただきました。フォーラムでは、午前中に企業講演、午後は有識者による基調講演のほか関係者によるパネルディスカッションが行われました。

第11回 青少年のインターネット利用環境づくりフォーラムin神奈川

講演1

『LINEのご紹介と、子どもにネットを使わせる際の注意事項』

講師:高橋 誠氏 (LINE株式会社 政策企画室)

世界に広がるLINEの利用状況についての説明があった後に、LINEの主な機能について、「音声通話・トークの仕組み」や安全対策としての「通報機能」、「ID青少年利用制限」「着信した際の通知機能制御」などの説明のほか、LINEが取組む啓発活動についてお話しいただきました。特に啓発活動については、講演会方式の研修会の実施のほかに、子どもに「自ら考える」啓発教育の手法として、『ワークショップ形式授業』の実践事例についてご紹介いただきました。

写真:LINE 高橋氏登壇の様子

講演2

『安心・安全なネット社会の実現に向けて』 ~トラブル事例とDeNAの取組み~

講師:朝倉 孝之氏 (株式会社ディー・エヌ・エー 渉外統括本部 渉外部)

株式会社ディー・エヌ・エーが運営するコミュニティサイトの「Mobage」について、利用原則や健全性強化の取組みについて、青少年保護の観点から6つの取組み(システム対応、人的対応、ペナルティ制度、啓発活動等々)についてご説明をいただきました。そのほか、トラブル事例やパトロール部隊の状況、利用金額の制限や返金対応、ネットへの書き込み・写真掲載の恐さなど、実例を挙げてご説明をいただき、啓発活動については「今から身につけていかなければならないことを一緒に考える」をテーマに実践事例が紹介されました。

写真:DeNA 朝倉氏登壇の様子

講演3

『Ameba「明るい話」「暗い話」』

講師:中村 広毅氏 (株式会社サイバーエージェント メディアサポート室 室長)

サイバーエージェントが運営するブログを基盤としたコミュニケーションサービスの「Ameba」について紹介〔明るい話〕いただいた後に、同サービスで実際に発生している事件〔暗い話〕について、3つの項目(①個人情報交換 ②不正アクセス・・・アカウント情報の交換 ③不正アクセスによる不正な〔身に覚えのない〕課金)に整理し、実例に基づきご説明いただきました。また、身に覚えのない請求が来た時、子どもが高額な課金をしてしまった時の具体的な対応策についてお話いただきました。

写真:サイバーエージェント 中村氏登壇の様子

基調講演

『「トラブル事例を伝える」から「自ら考える」へ』
~子どもたちを思考停止状態にさせないために~

講師:塩田 真吾氏 (静岡大学教育学部 学校教育講座 講師)

 フォーラム参加者(教職員、指導員、補導員等)にあわせ、「情報モラル教育をどう指導するか3つの指導方法について」、大学で実践されている講義内容なども交えながらお話をいただきました。
 はじめに、1)学校や地域で「情報モラル教育」が行われているが、子どもたちは、問題を「自分のこと」として自覚できているのだろうか? 2)「家庭でのルールづくり」を徹底しようといわれているが、ルールを作ればそれでよいのだろうか? 3)子どもたちにメディアとの付き合い方を考えさせているだろうか? という問題提起がなされ、問題と課題の違いについて会場全体で意見交換・認識の共有を行った後に、それぞれのテーマについて解説していただきました。
 「情報モラル教育」においては、コミュニケーションのトラブルやネット依存に関する問題提起はひじょうに多くなされているが、その問題を解決するための取組みついて語られることが少ないのが現状であることから、具体的な事象をしっかりとらえ(=問題)、問題を解決するための取組み(=課題)について考えるという観点から、
 指導のポイントとして次の3点を挙げられ、事例を交えてご説明いただきました。

  1.  トラブルの事例の提示だけでなく、問題を自分のこととして自覚させ安易な結論を与えずどのように対応すればよいかを様々の状況で考え続けさせること。
  2. ルールづくりを推奨する前に、なぜそのルールが必要なのか考えさせ、そのルールの中の「曖昧さ」を考えさせる。そして、つくって終わりでなくそのルールを運用するための方法を考えさせる。
  3. メディアは「送り手の意図」によって情報を構成していることを意識させ、ちょっと立ち止まって「送り手の意図」を考える力をつけさせる。

 最後に、子どもたちを思考停止状態にさせないために、「トラブル事例を伝える」から「自ら考えさせる」へ取り組みを進めていただきたいと締めくくられました。

パネルディスカッション

「青少年のインターネット利用環境整備に関する地域連携の取組について」

コーディネーター:
塩田 真吾氏 (静岡大学教育学部 学校教育講座 講師)

パネリスト:
長谷川 陽子氏(情報モラル教育アナリスト/有限会社Willさんいん代表取締役)
西村 多久磨氏(東京大学特別研究員 日本学術振興会〔PD〕)
齋藤 植栄氏(川崎市PTA連絡協議会)
植田 威氏(NPO情報セキュリティフォーラム)
鎌倉女学院高等学校 学生2名


 はじめに、塩田氏よりパネルディスカッションの進め方について、最初に①「青少年とネットに関する地域連携の姿とは」についての認識の共有を図ったうえで、②「それを実現するための課題は何か」について意見交換をしたいとの提案があり、各パネリストそれぞれのお立場(研究者、実践者、保護者、学生)から、ご発言をいただきました。
 ①「地域連携の姿」については、「情報共有(行政の縦割りをなくす)」「家庭を単位とした学校を取り巻く組織」「子どもは地域が育てる」「青少年目線のコミュニティの形成」とそれぞれのお立場から「地域連携」についてお話しいただいた後、「情報共有とは」「子どもとは」「地域とは」「コミュニティとは」について意見交換を行い認識の共有が図られました。
 つづいて、②「それを実現するための課題とは」については、「つながりを深める」「役割を明確化」「みんな自分の家族のように触れ合う」「子ども同士のFace to Faceのコンタクト」「身近なところからの交流」「強力なコーディネーターの存在」などが重要であり、「つながりの場を作る」「危機感の共有」「地域コミュニティでの実践」「課題を共有する人たちが集まって発信し続ける」が必要ではないかと話し合われました。
 そして、パネルディスカッションを通じて「問題意識の差」や「問題は本当に共有されているのか」「主体は誰」という問題、「地方と都市部の違い」など、地域連携の難しさを理解したうえで、「私たちは何ができるのか」との観点から、「自分のこととしてとらえ一人一人がしっかり意識する」「実証的なデータに基づき全国に発信していく」「仲間を増やす」「小さな規模でもコミュニケーションをしっかり取っていく」などパネリストからの意見表明があり、最後に、「うわべだけの地域連携とならないために、皆さん自身で何ができるか考えていただきたい」と締めくくられました。

写真:パネリスト登壇の様子