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ブロッキングと通信の秘密との関係 1.ブロッキング(強制遮断措置)とは

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ブロッキングと通信の秘密との関係 2.電気通信における通信の秘密との関係 2)違法性の阻却について

ブロッキングと通信の秘密との関係

2.電気通信における通信の秘密との関係
2)違法性の阻却について

ブロッキングは通信の秘密を侵害する行為ですが、正当行為、正当防衛、緊急避難などの違法性阻却事由があれば例外的に通信の秘密を侵すことが許容されます。違法阻却事由とは、通常であれば違法である行為が違法にならないような特別の事情をいいます。

●正当行為
法令に定められた行為や業務行為など社会的に正当なものとして許容される行為をいいます。

事例 ボクサーが試合で相手を殴る、警察官が被疑者を逮捕する。

●正当防衛
侵害者に対して反撃する行為をいいます。

事例 侵入した強盗に対して反撃

●緊急避難
  • 1自分や他人に対する危難が差し迫っている状況で(現在の危難)、
  • 2その危難を避けるためやむを得ずに(補充性)する。
  • (3生じた害が避けようとした害を超えない場合に限ります(法益権衡))

事例 車にひかれるのを防ぐため近くの花壇に飛び込んで花を折る。

当作業部会では、ブロッキングは緊急避難にあたる場合があるとの結論に至りました。

等作業部会の考え: 通信の秘密を侵害?=Yes → 正当防衛?=No → 正当行為?=No → 緊急避難?=Yes → [適法に実施できる]

正当行為

  • 法令上の根拠なし
  • NTT脅迫電報事件(大阪地判H16.7.7 大阪高判H17.6.3)
    ヤミ金融業者から脅迫電報を送りつけられた原告が、被告NTT各社には、脅迫電報を差し止めるべき義務があったのにこれを怠ったとして、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事件。裁判所はNTT各社の義務を否定し、以下のように述べる。
    • 電気通信事業者の提供する役務の内容として予定されているのは、あくまでも物理的な通信伝達の媒体ないし手段として、発信者から発信された通信内容をそのまま受信者に伝達することである。
    • ある電報が犯罪的な内容であるか否かを把握するためには、全電報を審査の対象としなければならず、結局、圧倒的に多数のその他の電報利用者の通信の秘密を侵害することになり、このことによる社会的な悪影響はきわめて重大である。
    • 通信の内容が逐一吟味されるものとすると、萎縮効果をもたらし、自由な表現活動ないし情報の流通が阻害される。この事件は電報の事件であるが、同様のことは、ISPにも妥当するのではないか。

正当防衛

正当防衛は侵害者に向けられた反撃でなければならないが、ISPのユーザーはなんら侵害行為をしていない。

緊急避難

緊急避難の3要件との関係は次のとおり。

●現在の危難の存在

「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難があること」
↓
誰でも容易に閲覧可能な状態に置かれていて拡散しつつある。

対策内容 効果 問題
サイト管理者へ児童ポルノ画像の削除を要請 画像が削除される 要請に応じないサイト管理者がいる
児童ポルノ画像を掲載したサイト管理者を逮捕 犠牲者が増えない 逮捕されても画像が残る

●補充性

「やむを得ずにした行為であること = 他に採るべきより侵害性の少ない手段がないこと」

ここでは削除や検挙がより侵害性の少ない手段。これらが困難な場合のみ補充性が認められる。
また、適法情報もブロックしてしまうオーバーブロッキングはいわば「不必要に侵害性の高い手段」。
オーバーブロッキングをできるだけ避けることも補充性を認めるためには必要。

  1. 児ポ画像
  2. インターネット:児ポ画像が児童ポルノサイトに掲載
  3. 利用者:誰でも容易に児ポ画像が見られる状態

●法益の権衡

「避難行為から生じた害が避けようとした害の程度を超えなかったこと」

侵害される法益:通信の秘密 ⇔ 守られる法益:児童の権利等

常に法益の権衡が認められるとはいえないが、当該児童ポルノ画像の児童の権利等への侵害が著しい場合には、通信の秘密と比較しても法益の権衡が認められる。

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ブロッキングと通信の秘密との関係 1.ブロッキング(強制遮断措置)とは