はじめに
通信の秘密は、憲法によって保障された国民の重要な権利であり、その侵害が法律によって罰則の対象とされていることは、決して軽視されるべきではありません。通信の秘密に関する解釈は、予想外の場面に波及し、不当な結果を引き起こす危険性を常に秘めており、その意味でも、慎重な検討が求められています。
しかしながら、他方で、インターネット上の児童ポルノ画像等の流通は重大な問題であり、ISPとしても、この問題に対して無関心でいることは許されないと考えます。したがって、通信(当該画像等へのアクセス)を強制的に遮断するブロッキングについても、通信の秘密を盾にいたずらに拒絶することは適当ではありません。
かかる問題に対し、安心ネットづくり促進協議会においては、2009年3月の発足直後、調査企画委員会の下に「児童ポルノ対策作業部会」を設置しました。
これまで、児童ポルノ対策作業部会においては、児童ポルノ禁止法の改正動向、児童ポルノに対する国際的な対応動向などについて情報交換を行うとともに、生じ得る影響を幅広く考慮し、通信の秘密として本来守られるべきものが不当に害されることのないよう、また通信役務の円滑な提供という電気通信事業者の基本的な社会的責務の履行が妨げられることのないよう留意しつつ、児童ポルノ画像等という特に対策の必要性と緊急性の高い問題について、ブロッキングという特殊な対策を採りうるのかどうか検討を行ってきました。
先般、最終報告書にて、その検討結果をとりまとめ公表いたしましたが、より多くの方々にご理解いただくため、本コンテンツに最終報告書の重要事項を集約いたしました。
2011年11月吉日
安心ネットづくり促進協議会
調査企画委員会
児童ポルノ対策作業部会
主査 森亮二(弁護士)
児童ポルノ禁止法
児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とした法律。
本作業部会において「児童ポルノ」と称するものは、上述の児童ポルノ禁止法に定められた「児童ポルノ」のことをいう。具体的には、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
- 一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
- 二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの